島じゃなくても野良猫はいる
田代島。青島。佐柳島。
日本全国には猫島と呼ばれる、野良猫で有名な島の数々があります。
近年の猫ブームでメディアに取り上げられる機会も多く、実際に訪れた方も多いのではないのでしょうか。
では、猫山という言葉を聞いたことはありますか?
ないですよね。今、私が作りました。
海と山。野良猫の聖地としてイメージするのはどっち?
多くの人は海と答えるのではないでしょうか。海沿いの町や港町に野良猫はつきものですよね。
しかし、山梨県のとある観光地の近くで、山の中にもかかわらず野良猫スポットとなっている場所を発見してしまいました。
山梨県の昇仙峡
みなさまは、昇仙峡という観光スポットをご存知でしょうか。
山梨県甲府市北部に位置する観光スポットの一つで、長い年月をかけて削り取られた岩場が織りなす、異世界のような景色の渓谷。関東近郊にお住いの方は、ご存知の方が多いのではないでしょうか。
入り口の「昇仙峡口」までは車で行くことが可能です。甲府駅からは30分ほどの立地。
昇仙峡入口付近には美術館もありました。お時間のある方はのぞいてみても面白いかも。
昇仙峡の順路に従って進むと、こんな形の岩場や
こんな形の岩場が広がっています。
私が訪れたのは、木枯らしの吹く晩秋のころ。友人数人をともなってレンタカーでの旅行でした。壮大なスケールの自然景観です。
友人のうち一人は、3年間ほど現地で仕事を行いながら、南米を放浪してまわったツワモノ。
南米と言えば、ウユニ塩湖に代表される世界的に有名な自然景観の宝庫ですが、その先輩をして、「南米でみてきた観光スポットにも引けを取らない」と言わしめるほどの見ごたえのある風景が広がっています。
首都圏にお住いの方であれば、新宿からJRの特急に乗って、一時間半程度で甲府までたどり着くことができます。東京からそのくらい近くに、こんな名勝地が広がっているなんて、冷静に考えるとすごいですよね。もっとみんな訪れるべき。
ちなみに、昇仙峡の順路の入り口付近にはワインを売るお店も並んでいて、試飲もさせてくれましたが、足を滑らせると危ないので飲みすぎないようにしましょう。
昇仙峡を抜けた先にある食事処へ
特異な形状をした岩の織りなす、仙界のような光景。一通り堪能し終えると、そのはずれに、川魚の岩魚(イワナ)や鮎を塩焼きにして提供している食事処にたどり着きました。
お店の前ではたき火がしてあり、暖をとることができました。
お店で出されたお茶を飲みながら、注文した焼き魚をほおばり、そこから眼下に広がる風景に心を躍らせていると、岩場に小動物のような、複数の動く影を発見。
「こんなところに野良猫か?」と少しいぶかしんでいた我々ですが、数瞬後にはもっと驚くべき光景が。
足元に猫がいる。しかもこっちを見ている。
しかも、よくよく周りを見回してみると、我々が食事をしていたお店には、合計で5・6匹の野良猫がいました。どこから出てきたんだ。
しかもなんだか妙に人懐っこい。人に対する恐怖心がない。なんなら触らせてくれる。
そこは私の席だ。トイレに行った隙に席を占拠するな。
と言っても通じないので、代わりに写真を撮らせてもらいました。
この時期、季節がちょうど秋から冬に差し掛かるころであったため、野良猫の中には寒そうにちぢこまっている子もいました。特にこの昇仙峡付近は、平野よりも標高が高く、コートを着込んでいても寒さを感じるくらいの気温。
野良猫も風邪をひかないのかな、と少し気になります。あるいは、どこか暖かい寝床があって、夜はそこで休眠をとるのかもしれません。
ある猫はたわむれ、ある猫はベンチの上に座り、またある猫はお店の店員さんの足元に引っ付いて回っています。
雄大な自然の中、車の交通量もほとんどないような場所で、野良猫たちが自由気ままに暮らしている様子を見ることができ、思わず時間を忘れて滞在してしまいました。
野良猫たちは周囲の人々に可愛がられているようで、食べ物には困っていない様子。決して我々が口にしている食べ物に興味を示すというようなことはありません。
基本的に野良猫は縄張りを持ち、縄張りをめぐって他の猫と争いをすることも多い生き物。
しかし、定期的に食料にありつける環境であれば、生存のために縄張りを維持しようと、他の野良猫と喧嘩を起こす必要性は少なくなります。
基本的には、どの猫も仲良く戯れている様子。野良猫同士がじゃれ合っている姿って、見ているだけでほっこりしますよね。
港町で猟師や周囲の住民から可愛がられる猫。それは、魚を狙うネズミから、漁を終え収穫した魚を守ってくれるからだと言われています。山の中で野良猫のたまり場になっている場所というのは想像しづらいものですが、世の中には公園や港街以外にも野良猫の楽園は存在します。
猫はお魚が大好物、と思われていますが、厳密にはお魚“も”大好物なのです。海外では魚以外の肉が猫の餌として一般的な地域も。お魚好きの日本人のそばにいたため、猫もお魚を食べるようになったんですね。
海沿いの地域以外でも、もっと野良猫の潜んでいるスポットを見つけていきたいと思います。